A-CAP店長(初代シクロクロス最速店長)ムコ 志は空よりも高く

東京あきる野市のA-CAP(AKIRUNO-Cycling Academy Project)の店長。ロード、シクロクロス、マウンテンバイクの3種目で最上級カテゴリーで戦った経験を活かし、情報発信をしております。自称「あきる野の狼」

基礎練習でレースでは習得できないものを身に付けると言うこと

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最近、改めて速くなるために基礎練習って大事だなと思うんです。
何を当たり前のことをと思われるかも知れないけど。
 
自分の場合、ここ数年はシクロクロスシーズンのレース数が多いので「テクニックはレースの中で身に付く」とシーズン前に少し基礎練習はするものの、シーズンインしたら殆ど基礎練習をしなかったし、テクニック系の練習と言うのも、今まではミニレース形式で、あくまでレースペースで走りながら、コーナーやギャップの攻め方を連続的な動きの中で習得する狙いで行っていました。
 
理由としては、その方が実戦的なのと、レースペースで走ればフィジカルも同時に鍛えられるからです。
ただ、それだけでは足りないなと最近感じているんです。
 
思えば、ここ2年は8月末に中国に遠征に行って、そこでヨーロッパの強豪の走りを見て色々学び、その良いイメージを持って国内のレースシーズンに突入していったので、イメトレ的にはかなりイイ感じでレースシーズンを迎えることが出来た。
あの、ヨーロッパの選手のただ速く走るためだけにテクニックとパワーを駆使して強引に曲げて行くコーナーリングは日本の上手い選手ともまた違って、試走中に後ろについて盗めるものが多かった。
 
ただ、今年は中国行かなかったし、おまけに夏に盲腸して準備期間が足りない状態でシーズンイン。フィジカル面の仕上げが遅れていることが辛いシーズンになってるけど、何気にテクニック面も準備不足だったんだなと、シーズンの折り返しまで来て痛感しています。
 
そんな感じで、幕張で自分の下手っぷりに気付いて以来、たまに近くの公園で、8の字とか黙々とやってるんですけどね。
8の字ってめちゃめちゃ奥が深いです。アラフォーになってやっと気付きました。

 
サッカー用の小さなコーンを目印に右コーナー左コーナーをただただ繰り返す。
自分のつけた轍が無数にあり、なぞりながらもっと速く曲がるにはどうすれば良いかを考える。
そして、ラインを少しずらして、イン側を攻めたり、アウトに振ってみて、どれが一番速いか試してみる。
または、タイヤを替えてみたり、空気圧を変えてみたり。。。
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最初はぎこちなかった一連の動作が、何度も繰り返している内に少しはスムーズに繋がるようになってくる。
これが一発で出来るくらいまでコーナーリングが上手くなれば、確実にレースでワンランク上の走りが出来る。
 
そして、単調な8の字も少し変化を付けてやるだけで凄く難しくなる。わざと石が有る所とか、木の根っこが有る所とか、土から舗装に変わる所を入れたりと。。。
 
ちなみに、今週末の全日本はキャンバー区間があるので、それを意識してキャンバー8の字をやってみた。
これが難しい。


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ここは市民球場裏の土手。イイ感じのキャンバーになってるし、特に遊具がある訳でも無く、他に人がいないから練習し易い


キャンバーを横に走行してきて、コーンを目印に180度ターンすると言うことは、必然的にコーナーリング最中はキャンバー登る・もしくは下ることになる。これはスムーズに出来ないとロスが大きくなる。



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コーンを目印にキャンバーを下りながら回り込む時は、気を抜くとキャンバーの下の方までズルズルと落ちて行ってしまい、ロスが大きい。クイックに回ってすぐに加速したい所だけど、下りながらのコーナーリングなので、後輪がスライドする、このスライドも意識的に行うか意図しないスライドかでは全然意味が違ってくる。
 
逆にコーンを目印に登りながらターンする時は、惰性を上手く活かさないと脚を使うことになる。
 
こんな感じでコーナー1つ取っても様々な要素がある。ここにもっと複雑な条件を足したのがレースと言うことになる。
いつもレースでは様々な要素を瞬時に判断して、自分の能力に合った走り方やラインを選択しているけど、逆に、もっとシンプルにコーナー1つ1つを突き詰めて攻めると言う練習が自分には足りなかったかも知れない。
 

これだけでは終わらず、もっと色々試す。


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左がダイヤ目のXN、右がグリップ最強のXL。練習前に撮影しておけば良かったが、泥が付いた後でトレッドが分かり難い。。。



わざわざ2台持ち込んで、ビットリアのダイヤ目タイヤXNとビットリアで一番グリップするマッド用のXLで同じコーナーを攻めてみる。
すると、意外な気付きが有った。
キャンバー8の字をするなら、グリップするタイヤの方が楽だろうと思っていたけど、案外ダイヤ目のXNの方がクイックに曲がれた。特に、コーナー後半の出口に向けて体制を整える所で、ダイヤ目の方がコンパクトに曲がれる。後輪がスライドし易くて、自転車を次のコーナーに早く向けられるのもあるけど、それだけじゃない、説明できない感覚があり、ダイヤ目の方が楽だった。逆にXLはグリップし過ぎて、路面を捕えすぎてしまうゆえに大回りしてしまう。前輪のグリップは重要だけど、前輪もグリップの少ないダイヤ目の方がススッとクイックに曲がってくれた。僕のテクニックじゃ、この感覚をちゃんと言語化するのが難しいんだけど、しっかり体で感じることが出来たことは大きい。
あとはこれを実戦でどう活かすか。
 
さらに気付きは続く。
自分の付けた轍によって、コーナーが変化していく。芝が剥がれてくると曲がり易かったダイヤ目はグリップを失い、ラインを外さないと曲がり難い。逆にグリップ最強のXLはコーナーリングが安定。
 
こう言う変化はレース中でもよく起こることだけど、独りで8の字してるだけでこんなに変わるんだから、大勢が一斉に走るレースでは、1周ごとに変わっていくコンディションに走りを合わせることがどれだけ重要か。
 
サポートの関係で、後半にタイヤを変えることが出来ない選手でも、走る側としてはこの変化を逃さず感じ取り、ラインを変えるとか、出来るだけの対応をすることが重要だと思う。独りで8の字してるだけなのに、こんなにコンディションは変化するのだから。


くりかえしになるけど、
レースには様々な要素が複雑に絡み合っているが、そこに対応するには、基礎の能力の高さと引き出しの多さが重要だから、もう少し基礎を鍛えて、ワンランク上を目指してみようと思います。